ごきげんよう。わたくし、デルタもんですわ。
10月も下旬にさしかかりましたわね。八百屋さんの店先が、赤くてつやつやしたもので埋まる季節ですの。
そう、りんご ですわ🍎
わたくし、ケーキ職人ですのよ。りんごが並びはじめると、指がそわそわしてまいりますの。
というわけで本日は、りんごのケーキを焼いた記録 をご報告いたしますわ。……成功と、失敗の、両方をですけれど。
🍎 りんごは、品種でまるで別の果物ですのよ
まず、りんごというのはひと種類ではございませんの。品種によって、甘さも酸味も、食感も、旬の時期もまるで違いますのよ。
秋に出会える顔ぶれを、少しだけご紹介いたしますわ。
- つがる … 早生 (わせ) の代表格ですわ。9月ごろに出まわりますの。甘みがしっかりしていて、みずみずしいのが持ち味ですわ
- 早生ふじ … 9月下旬から10月上旬にかけて収穫される品種ですの。青森県産のものが大半を占めておりますわ
- ふじ … いちばん名の知れたお方ですわね。青森ではおおむね10月末から11月上旬、山形では10月下旬から12月中旬にかけて収穫されますの
ちなみに シナノスイート という品種もございますでしょう? ふじとつがるから生まれた、甘みの強いりんごですわ。
こちら、名前のとおり 長野県生まれ ですの。東北の品種ではございませんのよ。おいしいので、つい仲間に入れたくなりますけれど、出自は正しくお伝えしませんとね。
りんごの主な産地といえば青森と長野で、山形もりんごの産地のひとつですわ。それぞれの土地で、それぞれの品種が育っておりますの。
🧁 ケーキ向きは、酸味のあるほうですわ
さて、ここからが職人のお話ですわ。
生でいただくなら、甘くてみずみずしい品種が最高ですの。けれど 焼き菓子にするなら、少し酸味のある品種 のほうが向いている、と言われておりますわ。
理由は単純ですの。りんごは火を通すと甘みが前に出てまいります。そこへ砂糖とバターが加わりますでしょう? 甘いものに甘いものを重ねますと、味の輪郭がぼやけてしまいますの。
酸味があると、その輪郭がきりっと立ちますのよ。しゃんとする、と申しますか。
ずんだもん「デルタもん、味見したいのだ」
わたくし「まだ切っている途中ですわ」
ずんだもん「切ってる途中のが、いちばんおいしいのだ」
……理屈は分かりますけれど。

🔪 まずは、りんごのバターケーキですわ
1品目は、失敗しにくいものからまいりますわ。バターケーキの底にりんごを敷いて焼く タイプですの。
作り方の流れは、ざっとこんな感じですわ。
- りんごの皮をむいて、くし形に切りますの。厚さはお好みですけれど、薄すぎると存在感が消えますわ
- 型の底に、扇のかたちに並べますの。ここは丁寧に。焼き上がってひっくり返したとき、そのまま模様になりますから
- バター・砂糖・卵・粉を混ぜた生地を、上から流しますわ
- オーブンで焼きますの
分量と温度と時間は、あえて書きませんわ。オーブンの機嫌はご家庭ごとにまるで違いますし、レシピ本によっても幅がございますもの。お手持ちのレシピの数字を信じてくださいまし。
わたくしから申し上げられるのは、ひとつだけですわ。焼いている途中で何度も扉を開けない こと。わたくしは開けます。何度も開けます。そして毎回、少ししぼませますの。
🥧 タルトタタン、ひっくり返しで大惨事ですわ
さて、2品目ですわ。
タルトタタン に挑戦いたしましたの。りんごと砂糖とバターをキャラメル色になるまで煮詰めて、生地をかぶせて焼いて、最後にお皿へ ひっくり返す お菓子ですわ。
キャラメリゼまでは、それはもう完璧でしたのよ。琥珀色で、ぐつぐつと、香りだけで幸せになれる出来ばえでしたわ。
問題は、最後の工程ですの。
型にお皿をかぶせて、勢いよく、ひっくり返す——
べしゃ。
……申し上げにくいのですが、半分が型に残りましたわ。お皿の上には、りんごが3切れだけ、ぽつんと。
ずんだもん「これは……新しい料理なのだ?」
わたくし「いいえ。事故ですわ」
わたくし、しばらく型を見つめておりましたわ。時給44円の身には、りんごとバターの再購入はなかなかの決断ですのよ。
けれど職人ですもの。翌日、リベンジいたしましたわ。
学んだことは2つですの。粗熱をきちんと取ってから返すこと。 それから、勢いではなく、ためらわずに一気に返すこと。 この2つは矛盾しているようで、していませんのよ。
2度目は、まるく、つやつやに、きれいに返りましたわ。思わず声が出ましたの。
🎉 試食会ですわ。あの方もいらっしゃいましたの

焼き上がりましたら、当然、試食会ですわ。
ずんだもんは開始5秒でフォークを握っておりましたし、ずん子さまは「いい香りね」と目を細めてくださいましたわ。
そして、そっと入り口のところに立っていらしたのが、あんこもん ですの。
あんこもん「べつに、においに釣られたわけじゃないもん」
わたくし「ひと切れ、いかがですの?」
あんこもん「……あんこのほうが上だもん。でも、まあ、味見はしてあげるもん」
そうおっしゃって、いちばん大きなところを取っていかれましたわ。
そのあと、しばらく黙って召し上がって、最後にぽつりと。
あんこもん「……りんごも、悪くないもん」
ずんだもん「あんこもん、うれしそうなのだ!」
あんこもん「ずんだもん? 知らないもん」
素直ではありませんけれど、お皿はきれいに空になっておりましたわ。わたくし、そういうの、しっかり見ておりますのよ。ふふ。
💌 本日のまとめですわ
- つがるは9月ごろ、早生ふじは9月下旬〜10月上旬、ふじは10月下旬からが収穫の時期ですの
- シナノスイートは長野県生まれ。東北の品種ではございませんわ
- 焼き菓子にするなら、少し酸味のある品種が向いていると言われておりますの
- タルトタタンは、粗熱を取ってから、ためらわず一気に返しますのよ
- あんこもんは「知らないもん」と言いながら、いちばん大きいところを召し上がりますわ
りんごは、これから冬にかけて品種のリレーが続きますの。同じ「りんごのケーキ」でも、使う品種を変えれば、まるで別のお菓子になりますのよ。
わたくしのことは デルタもんのプロフィールページ に載っておりますわ。ひねくれ者のかわいらしいあの方は あんこもんのページ でどうぞ。
次はどの品種で焼きましょうかしら。考えている時間が、いちばん楽しゅうございますの。
それでは、ごきげんよう。デルタもんでしたわ🔺🍎

